普段のズボン(その2) 謎 男
「世の中スイスイ(粋々)、お茶漬けサクサク…」志ん生、志ん朝の噺に出て来るフレーズ。肩の力が抜けてあんにゃもんにゃです。~長い散歩の途中~
謎 男
先夜、以前勤めていた会社の元同僚たち5人で呑んだ。
17時予約の居酒屋集合。
駅からそこまでの道すがら風は冷たいが夕雲は悠然とたなびいていた。

夕雲

その内の3人は前の予定が一緒なので揃って来た。
ワタシはひとりで店の入り口に着いたところで、その3人と偶然一緒になった。
ちょうど他の予約グループも予約時間らしくて入り口付近は混雑していた。
われわれは店員に案内されて予約席に進んだ。
残りの1人は既に先に来て席についていた。
6人掛けテーブル。

「?」
誰か知らない人が一緒に進んで来て同じテーブルに座ろうとしている。
ワタシの頭の中は?マークが渦巻いた。
(3人組が知り合いを連れて来たのか?)
(仕事関係の人を連れて来たのか?)
(???)

よく分からないまま、着て来たコートを皆がベンチ下の収納ボックスに入れる。
なんかテーブル全体がぎこちない雰囲気は否めない。

この集まりの幹事役をいつもやっているA君が(さすが幹事の使命感か)
その知らない人に声を掛けた。
「あの〜、どなたですか?」
「はぁ、…」
その謎男の反応もなんだかあまり要領を得ないが、とにかくわれわれグループの誰も知らない男だと判明した。
入り口から案内されて進む途中で幹事がワタシの名を呼んだ時に、偶然その男と同じ苗字だったそうで「このグループでいいんだと思って…」とかなんとか言っていたが、彼にとっては知らない顔ばかりのところにひょこひょこ付いて来て座るまで疑問に思わないとは!!!

一旦仕舞ったコートをまた取り出して、その謎男が視界から消えて行った。
当然われわれ5人の話題は今の出来事で盛り上がった。
「何十年ぶりのクラス会かなんかで、顔が分からなくてもそんなに気にしなかったのか」
「いや、ブログのオフ会ならば知らない顔同士で集まることは有りえるな」
「しかし、それにしてもヘンな奴だった」

トイレに行く時に店内を見渡してあの謎男がどこにいるか探したが不思議な事にどこにも見当たらない。
彼は単なる謎男ではなく、もしかしたら〝妖怪ぬらりひょん〟だったのではないか。
油断しているとまたひょっこり現れるぞ。